大阪高等裁判所 昭和29年(う)524号 判決
刑法第九六条の三第二項にいわゆる公正な価格とは、当該入札において公正な自由競争により形成さるべき落札価格を指称するものであることは所論のとおりである。
ところで原判決挙示の証拠によると(一)原判示第二の談合に基ずいて被告人の入札による落札価格二百四万九千円は、工事施行に要する実費に一割五分の利潤を加算し、これに談合所要金額を合算したものであつて、談合がなかつたとすれば、所論工事実費、相当利潤の外に少くとも金六万六千円上廻つた金額であり、(二)原判示第一の談合に基ずいて行われた第一次入札における被告人の入札価格金百二十一万円は、工事実費、利潤一割五分及び談合金予定額を包含した点において右(一)と全く同様であつたが、第一次入札及び再入札共神戸市の予定価格を超過していた関係上、両回共最低入札者たる被告人の会社と随意契約で請負金額が百十九万円となつた事情にあり、第一次談合入札額に比し契約額二万円方下廻つたため、当初の談合者たる日本アスフアルト工業株式会社及び永吉建設工業株式会社に対しては特に了解を求め、予定談合金の半額たる金一万二千円宛(計金二万四千円)を交付したものであつて、結局請負契約金二万円の減少による不利益は、談合金の減額により埋め、相当利潤とか工事所要実費には何ら影響させていない事実がそれぞれ窺われるのであり、かくのごときはまさに前記法条にいわゆる公正価格、すなわち当該入札において公正な自由競争により形成さるべき落札価格を害する談合というべく、原判決の認定するところも以上の趣旨に外ならないものと解されるのである。
そうだとすると、本件入札価格をもつて適正利潤を含まないいわゆる採算無視のものといえないことはもちろんであり、もとより違法でない談合入札があり得るからといつて本件も同様であるとはいえないし、さらに数人の談合入札者の中の一人がたまたま談合前から被告人より高価の入札を決意していたということは、それだけでは本件談合がいわゆる公正価格を害しないという理由にはならない。要するに論旨はすべてその理由がない。よつて刑事訴訟法第三九六条に従い主文のとおり判決をする。
(裁判長判事 荻野益三郎 判事 梶田幸治 判事 井関照夫)